自動車は便利な乗り物であると同時に、定期的な点検やメンテナンスが必要な機械です。日常的な点検を行うことで、思わぬトラブルや事故を防ぐことができ、愛車とより長くカーライフを過ごすことができます。しかし、整備士などの専門的知識のない初心者にとって、どこを点検すればよいのか、何を確認すべきなのか、初めての点検は不安に感じることも多いでしょう。今回は、自動車の所有者が日常的に点検すべき基本的な項目について説明していきます。
日常点検といってもどこを確認すれば良いのか、自動車の部品もたくさんありすぎて難しく感じるものです。自動車学校で使用ている学科教本の中にももちろん日常点検箇所は掲載されていますが、車内やエンジンルーム内を合わせると15項目以上も点検する場所があるのです・・・全部覚えるのは大変!という方のために、今回は4項目に絞って本当に最低限ここだけは必ずチェックしなければいけない!というものをご紹介します。
点検項目の覚え方はとっても簡単!
「ブタと燃料」
とってもシンプルな語呂合わせで簡単に覚えられますね。
「ブ」・・・ブレーキ
「タ」・・・タイヤ
「と」・・・灯火類
「燃料」・・・燃料
この4項目を最低限チェックしていきましょう。
ここからはそれぞれの点検項目を詳しく解説していきます。
自動車は突き詰めると、走る、曲がる、止まる。この3つの動きをして運転することになります。この中でも特に重要な動きとなる「止まる」ためには、ブレーキの日常点検が必要不可欠です。
日常点検にて確認する「ブレーキ」の項目は下記の通りです。
ブレーキには「あそび」と呼ばれる、ブレーキペダルを踏み込んでもブレーキがきかない部分があります。このあそびが多いと、ブレーキのききが遅れたり、ききが悪くなります。反対にあそびが少ないと、ブレーキがききっ放しの状態になったりしますので、適度なあそびが保てているかを確認しましょう。
こちらは毎回運転中に少しだけ気にしてほしい項目です。
ブレーキペダルを踏み込み、自動車が完全に停止するまで正常にブレーキがきき、速度が落ちているかを確認しましょう。この時、強く踏み込まないとなかなか減速しない状態であったり、ブレーキペダルに少し触れただけでブレーキがかかり始めてしまう場合にはブレーキの異常が考えられます。また、ブレーキをかけた時に異音がする、ブレーキペダル伝いにガクガクとした振動が足に伝わったり、右や左にハンドルが取られる場合にもブレーキに何らかの不具合が生じていることが考えられますので速やかに修理しましょう。
ブレーキチェックの最後の項目はパーキングブレーキの動作チェックです。特にオートマチック車に普段乗られる方の中には、駐車中はチェンレバーを「P」にいれ、パーキングブレーキは使っていないという方もいらっしゃると思います。特に新潟県など冬の寒さが厳しい地域ではブレーキの凍結防止のためパーキングブレーキを作動させずに駐車するということもありますので、意外と存在を忘れがちなパーキングブレーキの動作チェックも忘れずに行いましょう。
ブレーキペダルの踏み応え同様、引きしろが適当であるかを確認し、作動中には「!」の警告灯が表示されるかも合わせて確認しましょう。
自動車は、タイヤと路面との間に生じる摩擦の力を利用して走り、曲がり、止まることができる乗り物です。タイヤ1本あたりの接地面積は概ね葉書1枚分と言われ、4輪の自動車であれば合わせてA4のコピー用紙1枚分ほどの接地面積で自動車の動きを制御することとなります。ですので1本1本のタイヤの役割は非常に大きく、小さな不具合でも重大な事故につながる恐れがあります。
日常点検にて確認する「タイヤ」の項目は下記の通りです。
はじめに空気圧チェックです。自宅に空気圧を測定する器具がない場合には、まず写真赤丸部分に適度な張りがあるかを目で見て確認しましょう。
空気圧が高すぎるとタイヤがパンパンに張り、路面との接地面積が少なくなるためにスリップしやすくなります。反対に空気圧が低すぎると写真赤丸部分に潰れるようなたわみが生じ、タイヤの摩耗が大きくなり、ハンドルは重くなります。ヒビ割れやや破損を起こしやすくなるので、特に高速道路等での高速走行時にはスタンディングウェーブ現象が発生しやすい状態になり大変危険です。また、左右のタイヤの空気圧が違うときは、空気圧の低い方にハンドルが取られますので走行中に違和感を感じた時には空気圧もチェックしましょう。
とはいえ目視での空気圧チェックは正確ではないため、ガソリンスタンドなどで専用の空気入れを借りて給油のついでにチェックしましょう。
空気圧の指定は自動車ごとに異なります。大体の車は写真のように運転席のドアを開けたフレーム部分に指定の空気圧が記載されたシールが貼られていますので必ず確認してから空気を入れましょう。高速道路を利用する時には、指定の空気圧よりやや高めに入れると、タイヤが波打ち、やがてはバーストしてしまうスタンディングウェーブ現象を防ぐことができます。
タイヤの全周に著しい亀裂や損傷がないかを確認しましょう。また、釘や石、その他の異物が刺さっていたり、噛み込んでいないかを確認しましょう。もし釘などが刺さっていても、損傷が軽度な場合にはパンク修理をすれば比較的安価に応急措置をすることができます。発見が遅れたり、損傷が激しい場合にはタイヤの交換が必要になりますので見つけ次第、近くのディーラーやカーメンテナンスショップなどに見てもらいましょう。
タイヤの接地面に極端にすり減った部分がないかを確認しましょう。溝が十分にあるタイヤには赤丸部分のように接地面とスリップサイン部分に段差があります。走行を重ね、タイヤが摩耗してくると次の写真のようになります。
接地面とスリップサインの段差がなくなっていますね。この状態でタイヤの交換時期が来たことを示していますので速やかに新しいタイヤに交換しましょう。
残すところあと2項目です、ここまで覚えられていますでしょうか?それでは次の項目のご紹介です。
次は主に夜間に使うことの多い灯火(ライト)類です。ライト類も続々とLEDに変わっていき、ひと昔前よりライトが点いていない車を見かけることも少なくなってきた気がします。とはいえどんなものでも使っていればいつかは壊れてしまうもの。故障したことに気づかないまま走行してしまうと、ヘッドライトであれば夜間に歩行者や危険などの発見が遅れたり、ウインカーであれば周囲に右左折や進路変更の意思が伝わらず迷惑がかかってしまいます。自分だけでなく周囲の運転手の運転行動にも影響してくる灯火類のチェックも欠かさずに行いましょう。
日常点検にて確認する「灯火類」の項目は下記の通りです。
夜間の視界を確保するために重要なヘッドライト。上向き(ハイビーム)と下向き(ロービーム)が両方とも点灯するか確認しましょう。レンズに汚れや曇りがある場合には光量が足りなくなり、暗くなるのでレンズクリーナーなどを使い綺麗な状態を保ちましょう。
ヘッドライト内に取り付けられた小さいライトを車幅灯やスモールライト、ポジションライトなどと呼びます。電球タイプのものやアイラインのようなタイプなど様々なデザインがあります。前照灯と同じスイッチで点灯しますので合わせて確認しましょう。
今度は自動車の後方に移動しまして赤いレンズの尾灯を確認します。こちらは車幅灯と連動して点灯します。うっすら赤いレンズが光りますので明るい場所では確認しづらいことがありますので、車庫の中や、曇りの日などが確認しやすいです。
後方のナンバープレートを照らす番号灯も忘れずに確認しましょう。こちらも車幅灯や尾灯と連動して点灯します。
制動灯(ブレーキランプ)はブレーキペダルを踏み込むことにより点灯します。左右の赤いレンズ内と、室内やルーフ部分にも接地されています。少し厄介なのがブレーキペダルを踏み込んでいる時に光りますので、一人で確認しづらい部分となることです。周りに家族や友人などがいれば点灯しているか見てもらいましょう。一人で確認する場合にはブレーキペダルに漬物石を置いて・・・というのは冗談で、車庫内などの暗い空間でブレーキを踏み込みこみ、壁に反射した光で確認することができます。点灯しない場合にはブレーキペダルを踏み込んでも車庫内は明るく照らされません。とはいえ確認しづらい方法です。スマホを置いて動画を撮って点灯するのが一人でも簡単に確認できる方法ですのでおすすめです。
灯火類最後のチェック箇所は方向指示器(ウインカー)です。
左右それぞれ車体の前面、前側面、後面に6箇所オレンジ色のライトが点滅します。非常点滅表示灯(ハザードランプ)のスイッチをいれることで全て同時に点滅させることができますので点検時には便利です。
一箇所不具合が出ますと点滅する速度が速くなったりしますので、ウインカーを使用した際にいつもよりカチカチカチカチ騒がしい場合には球切れなどの故障が考えられますので速やかに確認しましょう。
いよいよ点検項目も最後の一つです。燃料(ガソリン・軽油・電気等)の残量が十分であるか確認しましょう。
特に夜間ともなりますとガソリンスタンドが閉店してしまったりと、給油したいタイミングで給油できない場合があります。思いがけぬガス欠などで立ち往生しないよう乗車する時は毎回確認する必要があります。
日常点検にて確認する「燃料」の項目は下記の通りです。
自動車の電源をONにするとメーターパネル部分に燃料の残量が表示されます。満タンの時はF(Full)を指し、燃料を消費するにつれてE(Empty)に近づいていきます。特に遠くまで運転するドライブなどの時には燃料を十分に補給してから出発するようにしましょう。
自動車によっては、燃料の量が残りわずかとなると給油ランプが点灯したり、目盛りが点滅するなどして警告してくれるものもあります。こうなると残り走行可能な距離が少なくなっていますので直ちに近くにガソリンスタンドや充電ポイントがないかを調べましょう。
いかがでしたでしょうか。今回は自動車の所有者が日常的に行わなければならない日常点検に点いて、超簡易版でご紹介しました。
自動車とかメカメカしい話は無理!という方も「ブタと燃料」だけなら自分でもできそうな気がしてきませんか?ぜひ一度大切な愛車のチェックをしてみてください。そして、少しでも「あれ?」と思う部分がありましたら、お近くのディーラーやカーメンテナンスショップなどに見てもらいましょう。あくまで日常点検はわたしたちド素人が行う点検です。整備のプロに見てもらうことが一番安全に、そして愛車を長く維持するコツです。
今後は今回紹介しなかったさらに詳しい日常点検についてもいくつかに分けてご紹介できればと考えておりますので、今後とも引き続きご覧いただけると幸いです。それではまた次のコラムでお会いしましょう。皆様安全運転でお過ごし下さい。それでは。