「駐車禁止」「駐停車禁止」の標識がない場所でも、実は道路交通法で駐車や停車が禁止されている場所があることをご存知ですか?今回のコラムでは「うっかり違反してしまった」とならないよう「駐車」と「停車」の違いから解説。その上で、忘れがちな駐停車禁止場所・駐車禁止場所の具体的な場所を一覧で紹介し、かんたんな覚え方も伝授します。さらに、違反した場合の罰則や点数、放置駐車違反の取り締まりについても詳しく解説していきます。
似ているようですが「駐車」と「停車」は明確に区別されています。これら二つの違いを正しく理解することは、駐車禁止・駐停車禁止場所のルールを守る上で非常に重要です。まずは、それぞれの定義から見ていきましょう。
「駐車」とは、「車が継続的に停止すること」や「運転者が車から離れていて、すぐに運転できない状態であること」を指します。具体的には、以下のような状態が「駐車」に該当します。
一方、「停車」とは、「駐車にあたらない短時間の車の停止」を指します。つまり、ごく短時間の停止であり、かついつでも直ちに運転できる状態であることが特徴です。
具体的な「停車」の例としては、以下のようなものが挙げられます。
違法な駐停車は付近の交通の混雑につながったり、道路の見通しを悪くさせたり、飛び出し事故の原因にもつながってしまいます。また、パトカーや消防車など、緊急自動車の通行を妨げる恐れもあるため、駐停車をする際には、必ず駐停車しても良い場所であることを確認しましょう。
道路交通法では、交通の安全と円滑な流れを確保するため、特定の場所での駐停車を厳しく禁止しています。これらの場所は、見通しが悪くなったり、他の車両や歩行者の通行を妨げたりする可能性が高く、事故のリ険を増大させるため、特に注意が必要です。
駐停車禁止場所は、一時的な停止であっても許されない場所であり、文字通り「駐車」も「停車」も禁止されています。
道路交通法で定められている駐停車禁止場所は以下の通りです。これらの場所では、たとえ短時間であっても車両を停止させることはできません。
最も明確な駐停車禁止場所は、「駐停車禁止」の道路標識や道路標示によって指定されている場所です。この標識は、青色の円の中に赤い斜め線が二本引かれたもので、道路標示としては、道路の端に沿って引かれた黄色の実線がこれに該当します。これらの標識・標示がある場所では、車の駐停車が禁止されます。
軌道敷内とは、路面電車が通行する線路が敷設されている道路の部分を指します。軌道敷内での駐停車は、路面電車の運行を妨げ、重大な事故につながる危険があるため禁止されています。
坂の頂上付近や勾配が急な坂道での駐停車は、見通しが悪く、後続車からの追突事故を誘発する可能性があるため禁止されています。特に、坂の頂上付近では対向車の発見が遅れやすく、急な坂道では車両の停止・発進が困難になることも理由です。具体的な距離や勾配の具合は明示されていませんが、安全を確保できる範囲で駐停車を避ける必要があります。
トンネル内での駐停車は、視界不良や排気ガスの滞留、緊急時の避難経路の確保が困難になるといった理由などから禁止されています。トンネルは閉鎖的な空間であり、事故が発生した場合の影響が大きいため、特に厳しく規制されています。短時間であっても、トンネル内での停止は避けてください。
交差点とその端から5メートル以内は、車両の安全な通行と見通しの確保のために駐停車が禁止されています。交差点は交通が集中し、多方向からの車両や歩行者が往来する場所であるため、駐停車によって視界が遮られたり、交通の流れが滞ったりすると、事故のリスクが高まります。交差点の「端」とは、道路の縁石の角や、交差する道路の境界線などを指します。
道路の曲がり角から5メートル以内も、交差点と同様に見通しを確保するために駐停車が禁止されています。カーブの途中で車両が停止していると、対向車や後続車がその存在に気づくのが遅れ、接触事故や追突事故につながる危険があります。特に、見通しの悪いカーブでは厳重な注意が必要です。
横断歩道や自転車横断帯、そしてその端から前後5メートル以内は、歩行者や自転車の安全を確保するために駐停車が禁止されています。これらの場所での駐停車は、横断しようとする歩行者や自転車の視界を遮り、車両が急に飛び出してくる危険性を高めます。
踏切とその端から前後10メートル以内は、列車との衝突事故や交通渋滞を防ぐために駐停車が禁止されています。踏切内での車両の停止は、列車の運行に重大な影響を与え、人命に関わる事故につながる可能性が極めて高いため、最も厳しく規制される場所の一つです。
安全地帯とは、路面電車の乗降客や歩行者の安全のために設けられた道路上の島状のエリアです。この安全地帯の左側とその前後10メートル以内は、乗降客の安全確保や路面電車のスムーズな運行を妨げないために駐停車が禁止されています。安全地帯のすぐそばに車両が停止していると、乗降客が危険に晒されることになります。
バスや路面電車の停留所の標示板(ポール)から10メートル以内は、公共交通機関の円滑な運行と乗降客の安全のために駐停車が禁止されています。バスや路面電車が停留所に安全に停車し、乗降客がスムーズに乗り降りできるよう、この範囲は空けておく必要があります。
このように駐停車禁止場所は多岐にわたりますが、簡単な語呂合わせで覚えることができます。駐停車禁止場所の語呂合わせは、
【コマオ君5才、不安定な10年、サーキットに行き、標識にぶつかる】
なんとも可哀想な語呂合わせですが・・・これで10個の項目を簡単に覚えることができます。
このように交通ルールを覚える上では語呂合わせをすると覚えやすいものもありますので、都度ご紹介していきます。
また、これらの場所は、いずれも事故が発生しやすい、または交通が滞りやすいポイントです。運転中に「ここに停めたら危険かな?」「他の車の迷惑にならないかな?」と考える習慣をつけることで、自然と駐停車禁止場所を意識できるようになるでしょう。
道路交通法では、交通の流れをスムーズにし、緊急車両の通行や人々の安全を確保するために、特定の場所での駐車を禁止しています。駐車とは、車が継続的に停止すること、または運転者が車を離れてすぐに運転できない状態を指します。ここでは、具体的な駐車禁止場所とその理由について詳しく解説します。
道路交通法で定められている駐車禁止場所は以下の通りです。これらの場所では、「駐車」が禁止され、「停車」は禁止されていません。また、管轄の警察署長の許可を受けている場合には駐車することができます。
最も分かりやすい駐車禁止場所は、「駐車禁止」の道路標識や道路標示によって指定されている場所です。道路標識は青地に赤色の円と斜線が一本引かれたもので、道路標示は道路の端に引かれた黄色の破線で示されます。これらの場所では、駐車することはできません。標識や標示を見落とさないよう、常に周囲に注意を払いましょう。
火災報知機は、火災発生時にいち早く通報するための重要な設備です。火災報知機から1メートル以内に駐車すると、火災発生時の発見や通報が遅れる可能性があります。また、緊急車両の活動を妨げることにもつながるため、この範囲での駐車は禁止されています。
個人の駐車場や車庫、その他自動車が出入りするための出入り口の端から3メートル以内は駐車禁止です。これは、他の車両や歩行者が安全に、かつスムーズに出入りできるようにするためです。たとえ短時間であっても、出入り口を塞ぐような駐車は、大きな迷惑となり、トラブルの原因にもなりかねません。
道路工事が行われている区域の端から5メートル以内も駐車禁止です。工事現場では、資材の搬入出や重機の移動、作業員の安全確保が必要です。この範囲に駐車すると、工事の進行を妨げるだけでなく、思わぬ事故につながる危険性があるため、駐車が禁止されています。
消防車や救急車などの消防用機械器具の置場や、消火活動に必要な水を供給する消防用防火水槽、そしてそれらの施設が道路に接する出入り口の端から5メートル以内は駐車禁止です。これは、火災などの緊急時に消防隊が迅速に出動し、消火活動を円滑に行うためのスペースを確保するためです。これらの場所への駐車は、人命に関わる重大な妨害行為となる可能性があります。
消火栓や、指定消防水利の標識が設けられている位置、そして消防用防火水槽の取り入れ口の端から5メートル以内も駐車禁止です。これらの設備は、火災発生時に消防車が水を補給するための重要なポイントです。駐車によってこれらの場所が塞がれると、消火活動が大幅に遅延し、被害が拡大する恐れがあります。常に緊急時のことを意識し、これらの場所には絶対に駐車しないようにしましょう。
駐車禁止場所も簡単な語呂合わせで覚えることができます。駐車禁止場所の語呂合わせは、
【1報3口5工消(いちほう、さんくち、ごこうしょう)】
一見意味のわからない言葉ですが、なんともリズムの良い語呂合わせですよね。これで駐車禁止6項目のうち5項目を覚えることができます。
この語呂合わせの惜しいところが【「駐車禁止」の標識や標示によって禁止されている場所】が入っていないところです。ですが、標識・標示によって禁止されるところは比較的に覚えやすい部分になるので、この語呂合わせで覚えるのがおすすめです。
駐車禁止場所に車両を停めた場合、道路交通法に基づき罰則の対象となります。運転者がその場にいる状態での違反と、運転者が車両を離れてすぐに運転できない状態(放置駐車)での違反とでは、適用される反則金や取り締まりの形態が異なります。
駐車禁止場所での違反に対する反則金と基礎点数は、以下の表の通りです。これは、警察官が直接取り締まり、運転者がその場で反則切符を交付された場合のものです。
車種 | 反則金 | 基礎点数 |
---|---|---|
大型 | 12,000円 | 1点 |
普通 | 10,000円 | 1点 |
二輪 | 6,000円 | 1点 |
原付・小特 | 6,000円 | 1点 |
違反場所が高齢運転者等専用駐車場所であったり、酒気帯びだった場合には、反則金や点数が増加します。
この基礎点数は、運転免許の累積点数に加算され、点数によっては免許停止などの行政処分を受ける可能性があります。
駐停車禁止場所に車両を停めた場合、駐車禁止違反よりも重い罰則が科せられます。これは、駐停車禁止場所での停止が、交通の安全や円滑な流れをより著しく阻害する危険性が高いためです。
駐停車禁止場所での違反に対する反則金と基礎点数は、以下の表の通りです。こちらも、警察官による直接の取り締まりの場合に適用されます。
車種 | 反則金 | 基礎点数 |
---|---|---|
大型 | 15,000円 | 2点 |
普通 | 12,000円 | 2点 |
二輪 | 7,000円 | 2点 |
原付・小特 | 7,000円 | 2点 |
違反場所が高齢運転者等専用駐車場所であったり、酒気帯びだった場合には、反則金や点数が増加します。
駐停車禁止違反は、駐車禁止違反よりも点数が高く設定されており、運転免許への影響も大きくなります。
「放置駐車」とは、運転者が車両を離れて直ちに運転することができない状態にある駐車を指します。短時間の駐車であっても、この状態であれば放置駐車違反として取り締まりの対象となる場合があります。
放置駐車違反の取り締まりは、警察官だけでなく、公安委員会から委託を受けた交通巡視員などによっても行われます。駐車監視員は、違反車両に標章を貼り付け、違反事実を記録します。確認標章が貼り付けられた場合、車両の使用者(所有者)に対して「放置駐車違反金」の納付が命じられます。この違反金は、反則金とは異なり、行政上の義務として課されるものです。
放置駐車違反金の額は以下の通りです。
放置場所 | 車種 | 反則金 |
---|---|---|
駐停車禁止場所 | 大型 | 25,000円 |
駐停車禁止場所 | 普通 | 18,000円 |
駐停車禁止場所 | 二輪 | 10,000円 |
駐停車禁止場所 | 原付・小特 | 10,000円 |
駐車禁止場所 | 大型 | 21,000円 |
駐車禁止場所 | 普通 | 15,000円 |
駐車禁止場所 | 二輪 | 9,000円 |
駐車禁止場所 | 原付・小特 | 9,000円 |
違反場所が高齢運転者等専用駐車場所である場合には反則金が増加します。
放置駐車違反車両のうち、特に交通の妨げとなる場合や、緊急車両の通行を阻害する恐れがある場合など、道路交通の円滑な流れを著しく阻害すると判断された車両は、警察によってレッカー移動されることがあります。
レッカー移動された場合、車両の保管場所まで引き取りに行く必要があり、その際にレッカー費用と車両保管費用が別途発生します。これらの費用は、違反者が負担することになります。費用は地域や移動距離、保管期間によって異なりますが、数万円に及ぶことも少なくありません。レッカー移動された車両は、保管場所の警察署やレッカー業者の指定する場所で、運転免許証や車検証などの必要書類を提示して引き取ることになります。
これらの罰則や取り締まりに関する詳細な情報は、警察庁のウェブサイトや、各都道府県警察の交通安全情報などで確認することができます。
安全かつ円滑な交通を確保し、不要な交通違反を避けるためには、駐車・停車を行う前の最終確認が非常に重要です。ここでは、特に注意すべきポイントを詳しく解説します。
駐車・停車する場所を選ぶ際、最も基本的ながら見落としがちなのが、周囲に設置されている交通規制標識と道路に描かれている道路標示の確認です。これらは、その場所での駐車・停車の可否や条件を示す重要な情報源となります。
特に以下の点に注意して確認しましょう。
これらの標識や標示は、電柱の陰や樹木で隠れていたり、路面が汚れていて見えにくくなっている場合もありますので、周囲をよく確認しましょう。
駐車・停車する場所が交通の妨げにならないか、常に意識することが重要です。たとえ短時間であっても、他の車両や歩行者の通行を妨げる行為は、交通渋滞の原因となるだけでなく、事故のリスクを高めることにもつながります。
具体的には、以下の点に注意しましょう。
常に周囲の状況に目を配り、他の交通の迷惑にならないよう、細心の注意を払うことが、安全運転の基本です。
「ほんの少しだけだから」「すぐに戻るから大丈夫だろう」という考えは、駐車違反の大きな原因となります。たとえ数分間の停車であっても、それが駐車禁止・駐停車禁止場所に該当すれば、交通違反として取り締まりの対象となります。
放置駐車違反の取り締まりは、駐車時間に関わらず行われます。また、悪質な違反と判断された場合や、交通の妨げになっていると判断された場合には、レッカー移動される可能性もあります。レッカー移動された場合、車両の移動費用や保管費用、さらには反則金や違反点数といった、金銭的・時間的な大きな負担が発生します。
交通ルールは、個人の都合ではなく、交通全体の安全と円滑な流れのために定められています。「自分だけは大丈夫」という根拠のない自信は捨て、常にルールを厳守する意識を持つことが重要です。短時間の駐車・停車であっても、必ず正規の駐車場を利用するか、駐車・停車が許可されている場所を選びましょう。
交通違反を防ぎ、安全な交通社会を築くためには、私たち一人ひとりの交通ルールに対する正しい理解と、それを実践する強い意識が不可欠です。
駐車禁止・駐停車禁止の場所は多岐にわたり、一見複雑に感じるかもしれません。しかし、これらの交通ルールは、道路を利用する全ての人の安全と円滑な交通を確保するために不可欠です。
駐車と停車の違いを正しく理解し、具体的な禁止場所を把握することは、違反による罰則や点数を避けるだけでなく、交通事故のリスクを低減するためにも極めて重要です。常に周囲の標識や道路標示を注意深く確認し、たとえ短時間であっても「少しだけなら」という油断をせず、他の交通の妨げにならないよう細心の注意を払うことが、安全運転の基本であり、私たちドライバーの責任です。
今回はこの辺りで。また次回のコラムもぜひご覧ください。